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館長雇止め・バックラッシュ裁判の情報をお伝えします


by fightback2008
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不当判決: 非常識で非論理的な「更新手続き」判断

アップされた判決文、お読みになりましたか?

判決当日の私の報告は、交流会での弁護士のみなさんの話をほぼ網羅しているのですが、 今回、判決文を読んで、重要な箇所が1カ所、ノートできていなかったことに気が付きました。その箇所は以下の部分です(判決文 63-64頁)。

「エ、更新における手続
(中略)
 たしかに、3回の更新の際、人権文化部長が、『すてっぷ』に来館し、簡単に原告の意向確認だけをする以上に、原告に対して、面談がされたりするなどの事情は窺えない。
 しかし、だからといって、更新の是非が実質的に検討されなかったということにはならない。少なくとも、3回にわたる更新時において、更新すべきでない事由があるにもかかわらず、十分な検討がなされないまま更新されてしまったという事情は窺えない。むしろ、原告のそれまでの活動から、更新に特に支障がなく、次年度も継続して勤務させることが相当であるとの判断がされていたと推認することが相当である。」

私も、当日、弁護士が何かこのあたりの話をして、非常に怒っておられたことは覚えています。でも、判決文の意味がよくとれなかなったので、ノートできなかったのです。今回、あらためて判決文を読んでみて、「ノートできなかったのも無理はない!こんなに非常識で非論理的な話を聞いて、その意味がわかる人がどれほどいるだろうか?!」と思いました。

この裁判では、被告側は、更新手続きについて、「事務局長が館長の業務執行状況を理事長に報告し、理事長が次年度の館長雇用を確認する」などと主張していました。

それに対して原告側は、
・「館長を補佐する」事務局長が館長の業務執行状況を報告するのはおかしい
・理事長は「今まで3年間で一度も館長と面会したことはない」と証言した
などの点を挙げて、「部長が、お願いしますと言いに来るだけの形式的なものであり、審査されることはなかった」と反論していました(最終準備書面7-9頁)。

今回の判決は、事実としては「人権文化部長」が「簡単に原告の意向確認」をするだけだった以上のことを認めていないにもかかわらず、こんな判断をしているのです。

裁判官に「更新手続きが形式的なものだった」と認めてもらうためには、労働者が解雇覚悟で、更新を拒否されるほどの失態や無能ぶりをわざとを示して、それでも幸運にも契約が更新されなければいけないのでしょうか? それとも関係者の出入りするすべての場所に不法に盗聴器でも付けて、24時間録音して「更新の是非が実質的に検討されなかった」ことを証明しなければならないのでしょうか? ひょっとしたら、そうした録音テープを提出しても、関係者の頭の中で「判断がされていたと推認する」のでしょうか?

この判決は、有期雇用者の解雇を、雇用主が完全に自由にできる判決ではないかと思いました。

遠山 日出也(大学非常勤講師)
by fightback2008 | 2007-09-29 01:25 | 裁判情報